お月見どろぼうって何?ユニークな風習の由来を考察【十五夜】

田舎暮らし

皆さんは「お月見どろぼう」という言葉を耳にしたことがありますか?

風流な「お月見」に「どろぼう」という不穏な言葉が組み合わさり、ユーモラスな雰囲気を醸し出していますね。

実は、「お月見どろぼう」は中秋の名月に一部の地域で行われている風習のこと。

まるで日本版ハロウィンともいえる年中行事で、ほっこりする内容です。

この記事ではそんな「お月見どろぼう」について深ぼりしたいと思います。

「お月見どろぼう」とは?

「お月見どろぼう」はどんな行事?

9月、中秋の名月に子供たちがお供え物のおだんごを盗む風習です。

「盗む」といっても取りやすいよう、わざと縁側など外から入りやすい場所に設置するのだそうです。

一夜限り、盗みが許される面白い習わしですね。

地方によっては子供たちが、

「お月見どろぼうに来ました」

「おだんごをください」

などとしっかり声をかけて家々を回ります。

おだんごだけでなく、お菓子を置いておくところもある様子。

これは、中秋の名月の当日だけ、子供を「月からのお使い」と見て、「おだんごは神様に差し上げた」ことにしているのですね。

七歳までは神のうち、とはよくいったものです。

「おだんごを盗まれると縁起がいい」

「子供たちがおだんごをたくさん食べると、豊作になる」

「おだんごをたくさん盗んだ子供は、将来お金持ちになる」

おだんごを取られた家ではこういって喜びます。

まさに、子供をおばけに見立ててお菓子をふるまうハロウィンと通じるところがありますね。

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「お月見どろぼう」が行われている地域

この風習は全国各地にあり、岩手県、福島県、茨城県、千葉県、山梨県、愛知県、奈良県、大阪府、大分県、鹿児島県、沖縄県の農村部で行われていると報告されています。

X(旧Twitter)を見ていると、往来に駄菓子を盛ったざるを置いて、自由に持ち帰れるウェルカムスイーツ形式の地域もあるみたいですよ。

また、保育園や幼稚園が主催したり、「お月見どろぼうマップ」を作ったり。

皆さん、いろいろな工夫をなさっています。

地域社会のあたたかみを感じる行事で、ちょっとうらやましいですね。

時代の波には逆らえず、年々減少傾向にあるようですが、ぜひ存続してほしいしきたりですよね。

どうして?おだんごを持ち去っても叱られない不思議

道徳や倫理に厳しい日本社会で、「おだんごを持ち去ってもOK」とは面白い。

そう考えていろいろな本を読んでみました。

すると、菊池暁『民俗学入門』に以下のような記述がありました。

「米はここぞという場面で食べられた。マツリの際、特別に用意した米の食品を神様に供え、そのお下がりを祭り手たちが共食して神の加護に与ることが、日本のマツリの基本となる。」

菊池暁『民俗学入門』(岩波新書 「食べる」p52)

「米の食品」とは餅、だんご、ぼたもち、おはぎ、寿司、赤飯などです。

こう考えると「お月見どろぼう」は、基本に忠実な風習といえますね。

月見関連の行事はコミュニケーションの場

また、日本には「月待」(つきまち)という行事がありました。

仲間が集まって念仏などを唱え、飲食をともにしながら月の出を待つ信仰行事です。

十五夜、十七夜、十九夜、二十二夜など決まった月齢の日に行われたものです。

この「月待」は辞書などには「信仰行事」とありますが、実際は地域社会のコミュニケーションの場だった様子。

老若男女が集まって、悩みを相談したり、愚痴を聞いてもらったりしていたのだとか。

「お月見どろぼう」も地域の交流を深めるために行われていたのかもしれませんね。

子供たちが夜、出歩いておだんごを取りに行ける家は全てご近所だったはず。

村や町で子供を育てる意識が強かった時代には、近所の小さな子たちにおだんごやお菓子をふるまうのは、今よりも自然なことだったのではないでしょうか。

おだんごを盗みに来た子供を物陰から見ていた家の人たちが

「〇〇さんの家の〇〇ちゃんがすっかり大きくなって」などと話し合ったのでは?とつい想像してしまいました。

ほほえましいですよね。

まとめ

「お月見どろぼう」は中秋の名月に行われる風習。

この日限り、子供たちがお供え物のおだんごを結んでもおとがめなし、というユニークなしきたりです。

秋の収穫をよろこび、来年の豊作を願う行事。

地域社会を円滑にするコミュニケーションの場だったのかもしれません。

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