2023年、十三夜(じゅうさんや)は10月27日金曜日です。
9月の中秋の名月は無事終わり、そろそろ冬支度を始める時期。
ちょっと厚着をしてお月見、といきたいですね。
今年の十三夜は週末。
家族みんなで月見ができますね。
この記事では十三夜の由来、月見の風習、十三夜を扱った文学作品について紹介します。
十三夜とは?
「十三夜」とは陰暦9月13日の月のこと。
十三夜の月は中秋の名月(十五夜)の次に美しいとされています。
「のちの月」と呼ばれることもありますね。
これは陰暦8月15日の中秋の名月とセットに考えられていたため。
昔は、十五夜・十三夜の月見はどちらも行うものとされ、片方だけの月見は「片月見」といって避ける傾向にありました。
十五夜の月を「芋名月」と呼ぶのに対し、十三夜の月は「豆名月」「栗名月」とも呼ばれます。
これはお供えする食物にちなんだ呼称ですね。
十五夜と同じく、月見団子をかざり、栗や枝豆をおそなえするのがしきたりです。
今では十五夜の月見が有名で、なかなか両方の月見を行っているご家庭は少ないですね。
十三夜の由来
十五夜の月見はもともと中国から始まった風習ですが、十三夜は日本独自のもの。
平安時代、醍醐天皇の御代に行われたのが記録としては最初とされています。
延喜19年、西暦でいうと919年のことですから、古い歴史がありますね。
この月見の風習と秋の収穫祭が結びつき、民間でも行われるようになった、という説が濃厚です。
十三夜の行事食
十三夜に食べたい料理はやはり月見だんご。
また、栗名月の名の通り、栗を使ったメニューもいいですね。
スタンダードな栗ご飯以外にも、栗の入ったドリア、栗と肉団子の煮物も寒い季節にはうってつけ。
栗のリゾットもおしゃれですね。
近年人気の月見そば、月見うどんも中秋の名月より、気温の低い十三夜向けの献立ですね。
忙しい方はシンプルに枝豆だけ、というのもあり。
もともと風流な行事ですので、軽い気持ちで楽しみましょう。
十三夜を題材にした文学作品
今はあまり行われなくなった十三夜の月見。
昔は広く行われていました。
そのため、多くの文学作品があります。
代表的なものをみていきましょう。
樋口一葉『十三夜』
月見の十三夜を検索していて、樋口一葉のページに行き着いた方は多いのではないでしょうか?
それくらい有名な作品です。
明治28年(1895年)に発表された短編小説で、封建的な社会に生きる女性の悲劇を描いたもの。
…と説明すると読みたくなくなりますよね。(笑)
簡単に、あらすじをご紹介します。
樋口一葉『十三夜』のあらすじ
良家に嫁いだ20代の女性 お関が、十三夜に実家の門をたたくところから話が始まります。
両親はとつぜんの来訪によろこび、月見だんごや枝豆、栗でもてなし、お関の嫁ぎ先(原田家)のおかげで弟も順風満帆、などとほめそやします。
ですが、お関の胸中はおだやかではありません。
お関の器量にほれこみ、「身分違い」と両親が固辞するのも聞かずに結婚を急いだ原田ですが、子供が生まれるとお関につらく当たるようになります。
女中の前で叱責され、「学がない」となじられ、夫婦らしい会話もない家庭内別居状態。
お関は「離縁させてほしい」と両親に頼みに来ていたのですね。
話を聞いた母親は胸を痛め、お関に同情しますが、父親は因果を含め、お関を原田家に帰します。
帰路、お関が乗った人力車の車夫は幼馴染の男。
お関に思いを寄せていた彼はお関が玉の輿に乗った後、身を持ち崩していたのです。
お関は彼に少しばかりのお金を渡し、別れたのでした。
樋口一葉『十三夜』のみどころ
現代の感覚だと
「原田、モラハラ夫!」「別れた方がいい」となりますが、時は明治時代。
まだまだ女性の立場が弱かったころ、思うようにいかないことは多かったでしょうね。
名作だけあって、お関が両親に実情を話す場面などリアルで涙を誘います。
また、十三夜の風習が詳細に描写されているので、当時のしきたりを知りたい方にはおすすめです。
この小説は1953年、『にごりえ』のタイトルで映画化されています。
オムニバス形式の作品で「十三夜」には芥川龍之介のご長男 芥川比呂志さんが車夫の役で出演していますよ。
お父様似なので、芥川ファンは必見です。
十三夜を題材にした俳句
「一本の竹のみだれや十三夜」 中村汀女
「みちのくの如く寒しや十三夜」 山口青邨
「十三夜漸くに人忘らるる」 高野素十
「十三夜夜半照りいでて男の子生る」 水原秋桜子
まとめ
十三夜について紹介してきました。
今年の十三夜はぜひ、ご家族でお月見を楽しんでくださいね。